2020/09/09 14:49

児玉知己の作品は抽象画です。
・・・しかしどうしてでしょう?・・
私たちは知らず知らずに絵の中に
「花」「樹」「滝」「小川」といった
具体的な「何か?」を見出してしまいます。
その「何か?」をきっかけに絵の中の形を辿り
知らず知らずのうちに視線は絵の中を旅します。
知らず知らずのうちに画面の中に取り込まれてしまいます。
知らず知らずのうちにずっと作品を観ている・・。

現代美術的には「オールオーバーな抽象絵画(画面の中に特定の焦点を持たない絵画)」
と称されます。このタイプの多くは勢いのあるドリッピングや勢いのあるストローク
で描かれていることが多いのですが、児玉の絵画は主に約6mmほどの筆による丁寧な
ストロークで描かれ、意図的に擦れさせます。隣のストロークとも微妙に隙間を作ります。
とても丁寧な描き方ですがその線や形は、作家の心の赴くままに自由に描き出されます。
色彩の選択はとても繊細です。でも、とても自由です。
ある時は曼陀羅図のような気配を見せ、ある時はサブカル的な気配を発しています。
現代に於ける、日本人による、真っ当な抽象絵画。そう思いませんか?

PS:作品はキャンバスでありますが、時としてデニムに描かれています。
デニムは一般的な帆布の縦横の織りにくらぺて1本斜めの織糸が追加されています。
ストロークの擦れに効果が生じます。また児玉が日本に於けるジーンズの聖地、
倉敷市の児島に生まれ育ったことも一つの理由でしょう。
(デニム生地の藍色は画面に影響していません。児玉がオリジナルの下地処理をしています)